エンタープライズ向けAIエージェントが真価を発揮するには、信頼できる最新の業務コンテキストにアクセスし、それをもとに行動できなければなりません。UberのMCP Gatewayは、避けて通れない具体的な課題に応えます。つまり、すべてのサービスチームにMCPサーバーの実装を求めずに、既存の数千ものAPIをエージェントが適切なガバナンスのもとで発見・利用できるようにするにはどうすればよいか、という課題です。Gatewayはディスカバリー、変換、適用を一元化することで、サービスチームがボトルネックにならない仕組みを実現します。エンドポイントを書き直す必要はなく、オーナーはレビューと有効化の権限を維持できます。この設計により、重複するインフラを減らし、ガバナンスを統一しながら、各チームの運用上の自律性を保てます。
アーキテクチャ上、Gatewayはコントロールプレーン(MCP RegistryとAutoCrawler)とデータプレーン(Proxy Gateway)に分かれています。Registryは仮想サーバーとツールの信頼できる唯一の情報源です。AutoCrawlerはIDLとネイティブMCPサーバーから継続的にツール定義を生成し、カタログの自動拡張を可能にします。Proxy Gatewayは実行時に仮想MCPサーバーを実体化し、MCP呼び出しをHTTP/gRPC/TChannelに変換して、サービスメッシュのサイドカー(Muttley)に実行を委譲し、MCP互換の結果を返します。この分離により、迅速な反復、設定のリアルタイム更新、多様なエージェントクライアントに共通する実行モデルが実現します。
システム全体を実用可能にするうえで、AutoCrawlerは重要な運用上の要となります。手作業での作成に頼るのではなく、UberはCadence主導のワークフローを使い、IDLレジストリをスキャンし、ネイティブMCPのハートビートを監視し、protobuf/Thriftの定義を解析して、初期ツールマニフェストを生成します。生成されたツールはデフォルトで無効のままで、所有権と有効化の判断はサービスチームに委ねられます。さらにAutoCrawlerは、LLMを使ってスキーマや説明を補強し、エージェント向けのドキュメントを作成します。機械による拡張性と人によるレビュー、セキュリティ上の承認プロセスを両立する、現実的な折衷案です。
セキュリティ、ポリシー、運用上の安全性は、チームごとに分散させるのではなく、ゲートウェイ層に組み込まれています。プラットフォームはUber社内のアクセス制御システムを通じて、ツール単位・サーバー単位のチャーター・ポリシーを適用し、応答の個人情報(PII)をマスキングするとともに、レート制限と監査を一律に実施します。サードパーティ製MCPとの連携でもポリシーを緩める必要はありません。Gatewayが社内トークンを中継し、サードパーティのサービスがそのトークンを外部認証情報と交換するため、中央の制御を維持できます。このモデルは、柔軟性とエンタープライズガバナンスの実用的な両立を実現します。
コストとパフォーマンスの面で、Gatewayはエージェントワークフローの拡張を妨げる2つの要因、すなわちコンテキストの肥大化とトークンコストに対処します。Omni MCPは、サーバーの検索、ツール一覧の取得、スキーマの取得、ツールの呼び出しを段階的に行えるため、エージェントが何百ものツール定義を事前に読み込む必要がありません。Response Projectionは、実行時に応答を要求されたフィールドだけに絞り込みます。また、aifx経由のCode Modeでは、CLIベースのコーディングエージェントが出力をモデルのコンテキストにすべて読み込まず、ディスクに書き出せます。これらの手法を組み合わせることで、エンタープライズ規模で不要なモデルコンテキスト、レイテンシ、API利用コストを削減できます。


